サーバーやOS、ソフトウェアなどのIT関連製品を導入・運用しているとよく耳にするEOLとは何を意味するかご存じでしょうか。EOLとは、製品のライフサイクル終了を意味し、メーカーによる販売やサポートが終了するタイミングのことです。本記事では、製品のEOLの概要と、混同しやすいEOS・EOSLといった用語との違い、EOLによるリスクや対応策について解説します。
目次
EOLとは
EOLとはどのような状態を指すのでしょうか。まずは、EOLの意味と、EOS・EOE・EOSLといった混同されやすい言葉との違いについて解説します。
EOLの意味
EOLは「End Of Life」の略で、製品のライフサイクル終了という意味です。ハードウェアやソフトウェア製品の販売とサポートが終了し、部品や部材についても新規の生産が行われなくなるタイミングのことを指します。
EOLの必要性
製品メーカーは、技術革新や市場動向に合わせて、需要と利益を産み出すために定期的に製品を刷新する必要があり、そのためにEOLを設定しています。また、永久に古い製品の修理用部材や不具合修正を行い続けるコストを削減するためにもEOLは必要なのです。
EOS/EOE/EOSLとの違い
EOLと混同しやすい言葉にEOS・EOE・EOSLなどがあります。意味は近いものもありますが、EOLとの違いを押さえておきましょう。
- EOS(End Of Sales): 販売終了
- EOS(End Of Support):サポート終了 ※EOLと同義
- EOE(End Of Engineering): 技術サポート終了 ※EOLと同義
- EOSL(End Of Service Life): 製品サポート終了 ※EOLと同義
EOS(End of Sales)は販売終了を意味しており、新規の販売は終了するものの、部品や部材の交換や問い合わせサポートは継続している状態です。EOS(End of Support)・EOE・EOSLはEOLとほぼ同義の言葉ですが、メーカーによって使われている用語が異なるため、対象の製品ではどの用語を使っているか確認してみましょう。
EOLになるとどうなるか
では、製品がEOLを迎えるとどのような状態となるのでしょうか。基本的に製品がEOLを迎えるとメーカーのサポートが受けられなくなり、下記のような不都合やリスクが発生すると考えられます。
- 製品の修理対応やサポートが受けられなくなる
- 不具合の修正・アップデートがされなくなる
- セキュリティリスクが発生する
製品の修理対応やサポートが受けられなくなる
製品がEOLを迎えると、メーカーの問合せ窓口もクローズすることがほとんどです。障害発生時の保守対応も受けられなくなるため、修理・復旧までに長時間を要してしまったり、割高な修理費用が発生してしまう恐れがあります。
不具合の修正・アップデートがされなくなる
EOLを迎えると、製品の不具合に対する修正が行われなくなります。新たなバグや脆弱性が発見されても改修が行われないため、利用者側の責任において、セキュリティ面の強化や運用対処などの回避策を取る必要があります。
セキュリティリスクが発生する
新規の脆弱性が発覚しても修正が行われないため、セキュリティリスクを抱えた状態で利用することになります。広く普及している機器やOSに重大な脆弱性が発見された場合、攻撃者は対象製品のユーザーに対し無差別に攻撃を行うため、サポート終了後の製品を使い続けていると攻撃を受けるリスクが高まります。
EOL対応のポイント
上述した通り、EOLを迎えるとさまざまな不都合やリスクが発生します。では、EOLへの対応はどのように行えばよいのでしょうか。利用している製品がEOLを迎え、延長サポートもできない場合は、バージョンアップか、他の製品(後継製品または同等の機能を持つ他社製品など)へのリプレイス(置き換え)を検討する必要があります。
EOL対策としてバージョンアップやリプレイスの検討を行う際、何を目的とするかが大きなポイントです。大きく分けて以下の方向性が考えられるでしょう。
- 既存踏襲
- 新製品の活用による効率化・コスト改善
- 新技術の活用によるビジネス拡大・転換
既存業務の安定運用を重視するか、それとも業務効率化や、さらにはビジネス拡大・転換へのチャンスと捉えるかどうかで、EOL対策の方針や方法が大きく変わってきます。
既存踏襲
現行と全く同様の機能を持つ製品へのバージョンアップまたはリプレイスを行い、既存の業務を変えることなく踏襲することを指します。既存の業務がビジネスの上で問題なく遂行できており、EOL対策による影響を最小限に抑えたい場合に採用するべき「守りの策」と言えるでしょう。
新製品の活用による効率化・コスト改善
サーバーやネットワーク機器などのハードウェアは、技術の進化やCPUの集積度向上、メモリやディスクの価格低下などにより、数年単位で性能やキャパシティの向上が行われています。そのため、EOL対策により新製品への切り替え・集約を行うことで、より少ない設備投資で業務を回せるようになる可能性があります。
新技術の活用によるビジネス拡大・転換
DX(Digital Transformation)の波が押し寄せている昨今、ビジネスに大きな変革をもたらすために新技術を積極的に採用する企業が増えています。例えば、サーバーのEOL対策としてクラウドへの移行を行うことで、インフラを素早く用意することができるため、新サービスを迅速に立ち上げることができます。
また、既存のサーバーやネットワーク機器をそのまま仮想化・クラウド化するのではなく、システム構成や業務フロー自体を見直すことも効果的です。システムによってはSaaSを利用することで、今までかかっていた運用コストを削減することも可能でしょう。
このように、EOLをビジネスチャンスと捉え、ビジネスの俊敏性を高めた「攻めの策」に転じることも可能です。
EOL対応時の検討事項
EOL対策としてバージョンアップやリプレイスを行う際の課題としては以下のようなものが挙げられます。リプレイスに備えて事前に検討しておきましょう。
費用が準備できるか
ハードウェアでもソフトウェアでも、バージョンアップやリプレイスを行うための設計や移行・切替えなどの作業が発生します。ハードウェアやソフトウェアそのものの調達費用だけでなく、そうした作業の見積もりを適切に行って予算を立てる必要があります。
近々終了する予定のサービスのシステム基盤など、場合によっては費用対効果が見合わないという判断になることもあるでしょう。
対応期間が取れるか
製品のバージョンアップやリプレイスはすぐにできるものではありません。設計・構築・移行・切替えなどの作業にかかる期間を見積った上で、土日や年末年始などの長期休暇など、業務に支障のない時期を選んで移行・切替え作業を実施していく必要があります。
対象システムが大きくなるほどリプレイスにかかる期間も長くなり、既存システムのEOLまでに完了できないという場合もあるでしょう。また、そうした事態を防ぐために早い段階から新システムを並行稼働して準備するとなると、二重に動かす期間が長くなってしまいコストが嵩んでしまうという課題が考えられます。
既存の機能が踏襲されているか
現行の製品で使用していた機能が、そのまま踏襲できているかを確認することは重要です。仕様変更が入っていたり、互換性が無くなっていたりすることもありますので、事前に確認や検証を行うことが必要です。
既存のソフトウェアが新しい製品に対応しているか
特にサーバーやOSなど、他の製品の動作基盤となる製品については、リプレイスやバージョンアップを行うことで、既存のソフトウェアとの連携がうまくいかなくなるケースもあります。事前に既存製品とのサポート状況や、問題なく動作するかどうか確認・検証することが重要です。
まとめ
EOLに伴うリスクは既存のビジネスに影響を及ぼすおそれがありますが、企業の状況によってはすぐにバージョンアップやリプレイスを行うことが難しい場合もあるでしょう。ベアケアでは、例えば「あと1年だけ今のサーバーを使いたい」「リプレイスするほどの予算がない」といったご要望に柔軟に対応できる「ハードウェア延長保守サービス」やOSの延長サポートサービスを提供しています。EOLの終了日が異なる製品間の「延長揃え」や、システムリプレイスの「つなぎ」としての活用も可能ですので、EOLに関して課題をお持ちであればお気軽にお問い合わせください。